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Creativity

写真と恋人のやわらかい関係

抱き合い、肌と肌とを密着させ、ひとつの塊になって愛し合うふたり……SKYNBUN第1号に 新たに写真を撮り下ろしてくれたフォトグラファーハルさんは「男女の愛」をテーマに10年以上にわたって 500組超のカップルを撮影、作品を発表してきた恋人写真のエキスパート。

ふたりのカラダをひとつにしたい。 だから僕は写真を撮る。

Photography by ハル

キャッチーでビビッドなイメージは海外アートシーンでの評価が高く、昨年9月にはオランダ・ロッテルダムでの大規模な写真展に招待されたばかり。そんなハルさんに作品の秘密や男と女のやわらかい関係について尋ねてみました。

撮り下ろしていただいた写真、素敵です。どんな方法で撮影したんですか?

「裸で抱き合うふたりを撮影したイメージをプリントして、一度クシャクシャにするんです。それを広げて、改めて複写すると、ふたりの姿が立体的に立ち上がって見えるようになるんですよ」

おもしろい!SKYNBUN第1号のテーマ「クリエイティビティ」にピッタリの写真だと思います。そもそもハルさんが恋人たちをテーマに作品を撮り始めた理由を教えてください。

「広告会社のカメラマンをしながら作品を撮っていたから、自分の写真は夜しか撮れない。それでクラブやライブハウスに集まる人達を撮り始めたんですよ。そこで撮っていて一番おもしろかったのがカップルだったんです。恋人達には激しい感情のドラマがあるし、表情のバリエーションも多彩だから」

今回は海外の広告賞で話題になったコンドマニアの広告キャンペーンのイメージと同じカップルを起用して撮影していただきました。同じモデルでも表情が本当に違いますね。布団圧縮袋にカップルをパッキングして撮影するという「Flesh Love」のアイデアはどのようにして生まれたのですか?

「撮影の際、大半のカップルは照れたり周囲の目が気になるせいか離れて写ろうとするんです。でも、なかには人前でも平気でハグやキスを始める恋人達もいます。その様子を見て、『いかに密着させるか』がカップルを撮るカギになることに気づいたんです。いくつかテストしたなかで、ふたりの愛の緊密さをもっとも強力にビジュアル化できたのが布団圧縮袋のアイデアでした」

ハルさんに撮影されたあと「前より親密になった気がする」「このままひとつになれたらいいのに」と言うカップルが多いことに驚きました。

「撮影のとき、僕は『ふたりのカラダをひとつにしてしまいたい』っていう想いで作業するんです。それが伝わって共感してくれたんでしょうね」

ふたりの関係に実際の変化が起こったカップルはいるんでしょうか?

「以前の撮影でケンカしていたカップルがいて、布団圧縮袋に入る直前になっても彼女の機嫌が治らなかったんです。その日はいいカットが撮れなくて3回くらい撮影したんだけど、終わる頃には彼女、自分が怒っていたことをすっかり忘れてしまったみたい。ふたりでニコニコしながら帰っていきました(笑)」

無理のない関係じゃないでしょうか。 お互いの本当のところを理解し共有することでいい関係を育てられれば優しくなれるし、その分、楽になれるから

「やわらかさ」は「優しさ」だと。

「それと、撮影する側としては、体のやわらかいカップルのほうがより複雑に密着させることができるから撮りがいがあります。やわらかさって、大切ですよ(笑)」

Photography by ハル

プロフィール

ハルさん

フォトグラファー

1971年東京生まれ。大学でメカニックを学ぶ。2004年写真集『PINKY & KILLER』発売後、カップルを被写体に撮影を行っている。2011年Art of Photography(USA) 1st Place、2012年Prix de la Photography(Paris)3rd Prize、同年同賞2nd Prize受賞。写真集に2004年『PINKY & KILLER』(私家版)、2007年『PINKY & KILLER DX』、2009年『Couple Jam』、2011年『Flesh Love』(以上 冬青社)がある。

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